僕がまだ駆け出しだったころ、とある伝手で年商10億の実業家の社長さんとお付き合いさせていただく機会があった。
僕はもともとIT系のエンジニアをしていたので対人関係が得意じゃない。しゃべりも下手、度胸もない、パソコンをピコピコやってるのが性に合ってる性格だった。
けどITエンジニアは30歳を超えてくるころに分岐点がある。それがITのプロフェッショナルの道に進むか、管理職の道に進むかという話だ。今はどうなってるのかわからないが、当時はこんな感じだった。40代で平社員のSEをやってる人もいるけど徹夜当たり前の仕事なので体力が持たない。
かねてから自分を変えたいと思っていた私は何をとち狂ったのか「営業マンをやりたい」なんて考えちゃった。
会社を辞めてその年商10億の実業家のもとに営業マンとして転職をしたのだ。営業マンといえば歩合制でしゃべりもうまくなきゃいけない超ハードな仕事。自分にできるだろうか不安だった。
その方から直接言われたことは営業のアドバイスなんかではなく次のような言葉かけだった。
「おまえならできる」
「おまえは度胸がある」
「できる出来る、大丈夫だって」
「スポンジみたいに何でも吸収するな」
「経験が無いならなんでもやってみ」
「やるやんけ、やったな」
「ほら、できたやん」
この方は大阪人だったわけですが。
当然意図的にこのような言葉かけをしてくれてたことは理解しているけど。言われて嫌な気持ちは起きない。
そして繰り返し何度も何度もこのような言葉をかけられているとその気になってしまうのだ。
スイッチが入るというか、なんというか。
自分は出来るに違いないと思い込んでしまう。そして1件でも成約が取れると「あ、できた」「これでいいんだ」となる。
それからはもう簡単。飛び込むのが怖くなくなって営業の数字を上げる事ができました。
その後も定期的に
「期待してるで」
「●●ならできる」
という言葉をかけていただき調子に乗って仕事をさせていただきました。
その方は年商10億、実業界の数字では小さな数字だと本人もおっしゃっていましたけど、彼はもともと貧乏サラリーマン。1代で築き上げた方です。なによりすごいのは本人の売上よりも、彼の指導によって多くの社長を輩出しているという事です。
彼は人を育てるのが上手だったということですね。自分だけ儲かればいいやではなくて。
あるとき、こんなエピソードを語ってくれました。
有名なエジソンの話、もう皆が知ってる話だと思いますが書いておきましょう。
エジソンは発明家として天才的な存在ですが、小学校に入学したときに落ちこぼれだった。
そんな時、母親がかけてくれた言葉。
「この子は人と違う」「この子は天才だ」「たまたま小学校があわなかっただけだ」
このような言葉を何度も何度もかけられて。その気になったエジソンが大成功してしまったという話。
もう1つ、これは有名ではない話。
ある高校に1人の教師が入ってきた。その教師が受け持つことになったのは優秀な進学クラス。
けどその先生が教えたとたんにクラス全員の点数が駄目になった。
40点とか30点とか赤点とかとるようなテストの結果だった。
その先生は自分が先生になったせいで生徒の成績が悪くなったと思い、こう言った。
「おかしい、君たちはデキル生徒なのに!」
「僕の教え方が悪いせいでできなくなってしまった」
「君たちは優秀なんだ、しっかり教えるから頑張ってほしい」
「ぜったいに君たちなら出来るから、一緒に頑張ろう」
来る日も来る日も言い続け、教え、それでもテストの成績があがらないのにおかしいなと思っていた。
ところが大学受験の頃。彼らは見違えるように成績があがっていて、校長先生からこう言われた。
「すごいじゃないかキミ!あの落ちこぼれクラス全員を大学進学させるなんて!」
「え!?」
そう。もともと担当したクラスは進学クラスと聞いてたけど、実は落ちこぼれクラスだったのだ。最初に間違えて進学クラスと伝えられていたので、先生も勘違いして「まるで優秀な生徒のように扱っていた」ということ。
生徒たちも自分は優秀なんだと思い込んで全員大学に行く事ができた、という話。
このようなお話をしてくれて。
人は扱われ方で変わるということ。
だから私みたいに営業経験が無くても出来るようになるし。
もし子供がいるなら親がどう扱うかで将来が変わってくるのだ。
あなたはダメな子だ、夢なんか叶わない、そんなの無理だって、といわれて育った子と、
あなたなら出来る、絶対に夢がかなう、才能がある、資質がある、と言われて育った子。
結果は見るより明らかであろう。